2014年9月20日土曜日

第十九幕 オリバー・ツイスト

「オリバー・ツイスト」は2005年のイギリス映画。ロマン・ポランスキー監督。
原作はチャールズ・ディケンズの長編小説。

舞台は産業革命期のイギリス。
産業革命は生産手段のある資本家には富をもたらした半面、持たざる者は自らの労働力を売るしかありません。労働者は仕事を求めて都市へと集まってきます。主人公のオリバー・ツイストもその典型だったのでしょう。

オリバー少年は孤児。孤児院で虐待を受けたのが原因でロンドンへ向かいます。ロンドンへは食うや食わずの逃避行。もっともロンドンにたどり着いたところで、仕事と食にありつける保障はないのです。

飢えた果てに、雑踏にへたり込むオリバー。あわれな彼を拾ったのが盗賊団でした。
その頭領は奇怪な老人でした。名はフェイギン。ディケンズの原作ではユダヤ人という設定です。
フェイギンは、オリバーのように飢えた少年たちを拾ってきては、盗みをさせていたのです。



少年たちは生きるために悪事を働きます。指示をするのはフェイギン。この老人に背くことは死を意味しました。
それでもオリバーは悪に染まりません。孤児院で叩き込まれた道徳と礼儀のためでしょうか。

ところが、オリバーは警察につかまってしまいます。
仲間の少年たちとともに本屋ですりを働こうとしたときのことでした。オリバーは法廷に引き出されますが、本屋の主人がオリバーが犯人でないことを証言します。

無罪となったオリバー。この少年を引き取ったのが、ブラウンローという裕福な紳士。
ブラウンローはオリバーを保護し、オリバーも幸せに暮らします。ところが、この幸福も長くは続きません。
オリバーがつかいに出たときでした。フェイギンの一味が再びさらっていったのです。

フェイギン一味に運命をもてあそばれ続けるオリバー。
フェイギンの隠れ家から脱走を図るものの、あえなく捕まり、屋根裏部屋に閉じ込められます。
その陰で、フェイギンの一味、ビル・サイクスという男はブラウンロー邸への強盗を企てていたのです。

オリバーは案内役として引き出されます。もちろん本意ではありません。
そして決行の夜。物音に気づいたブラウンローはオリバーの姿を認めます。助けを求めて叫ぶオリバー。このときブラウンローがあわてて発砲したために、オリバーは重傷を負います。オリバーはフェイギンの一味に抱えられて隠れ家に戻りますが、フェイギンとビルはオリバーの殺害を決意します。

これを見かねたのがビルの妻ナンシーでした。ナンシーは隠れ家を抜け出し、ブラウンローと密会。オリバーが捕らわれていることを告げます。
この告げ口を知ってビルは逆上します。ナンシーは殴殺。オリバー誘拐とナンシー殺害は新聞をにぎわす大ニュースとなるのです。

警察によるおおとりものの末、ビルは死に、フェイギンはついに刑務所送りになります。
あわれな少年オリバーをめぐるはらはらドキドキの展開も、ここまでは予想の範囲。

しかし、死刑となったフェイギンの面会に訪れたオリバーは、予想外の行動をとります。
大悪党フェイギンへの感謝を述べるのです。死刑におびえていたフェイギンに笑顔が戻ります。
これだけひどい目に合わされたのだから、恨み節をぶつけてもよさそうなものです。

心温まるというよりも、現代人としては違和感を覚えてしまいます。
それでも、当時はいつ飢えて死ぬかわからない時代。庶民にとっては、一日一日を生きるのに精一杯。たとえどんな悪党でも、フェイギンが与えてくれた一宿一晩の恩を忘れられなかったのでしょうか。
人々の価値観は善か悪かよりも、まず生か死かに置かれていたのかもしれません。

いたいけなオリバー少年は、自分の意思で生きるというより、フェイギンやブラウンローら大人たちの間で運命をもてあそばれる存在です。その点は、同じくポランスキー監督作品の「戦場のピアニスト」の主人公、シュピルマンに通じるところがあります。

だからこそ、フェイギンの巨悪ぶり、現代人の価値観を超えた存在、そして産業革命期の過酷さが浮き彫りにされるのではないでしょうか。 

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