2014年9月24日水曜日

第二十一幕 セント・オブ・ウーマン 夢の香り

セント・オブ・ウーマンは1992年のアメリカ映画。
盲目の退役軍人フランク(アル・パチーノ)と全寮制高校の生徒チャーリー(クリス・オドネル)の交流を描くヒューマンドラマ。この作品でパチーノはアカデミー賞の主演男優賞を受賞しています。

パチーノ演じるフランクは傲岸不遜。酸いも甘いも味わってきた大人です。
一方のチャーリーは、純粋で世間知らずの子供。

物語が動き出すのは、対照的な二人の出会いから。
チャーリーはアルバイトで、フランクの世話を頼まれます。
ところが、世話を受けるほうのフランクはとてつもなく気難しい人物でした。気に入らないことがあれば、すぐに怒鳴りだします。

チャーリーは全寮制名門高校の生徒ですが、家庭は貧しく、奨学金がたよりの苦学生です。
お金がないからといっても、こんな偏屈親父の相手はつとまりそうもありません。アルバイトを辞退しようしますが、そうこうしているうちにフランクは旅に出ると言い出します。行き先はニューヨーク。チャーリーは問答無用で同行を求められるのです。

困ったことになりました。
宿泊は名門ホテル。食事は高級レストラン。フランクは酒と女に囲まれて豪遊しようとご機嫌です。

ところがチャーリーは、高校を休まなければなりません。
そして一方で、今後の人生を左右しかねないトラブルにも見舞われていたのです。

彼は深夜の校内で、友人たちのいたずらを目撃してしまいます。彼らは闇に潜んで、嫌われ者の校長の愛車がペンキまみれになるわなを仕掛けていたのです。

そして翌朝。校長が駐車場に車を停めたところで、頭上に仕掛けられた風船からペンキが飛び出てきて、計画は成功。もちろん校長は激怒。犯人と目撃した生徒がいないか捜索を開始します。

運悪くチャーリーは校長に呼び出されてしまうのです。意地の悪い校長は条件を出します。
密告すればハーバードへ推薦。口を割らなければ退学だと。




チャーリーは自らの処遇がどうなるか気が気ではありません。早く学校に戻りたくて仕方がない。
一方のフランクは豪遊をやめようとはしません。退役軍人の恩給があるからといって、贅の限りを尽くそうとするフランクの行動は、チャーリーには到底理解できません。ところが、チャーリーはフランクのとんでもない計画を知ってしまうのです。

彼の途方もない豪遊は、人生に絶望した末での行動だったのです。
そう。彼はピストル自殺で人生に終止符を打つつもりでした。
一方のチャーリーは、学校に戻るどころではなくなってしまいました。必死でフランクを止めにかかります。元軍人と高校生の命がけのやり取り。

とんだ邪魔の入ったフランクはいきり立ちます。
しかも相手は人生も世の中のことも知らない青二才です。

「おれに人生が?人生がどこにある?あるのは暗闇だ!」
「おれに生きねばならない理由がひとつでもあったら言ってみろ!」

チャーリーも負けてはいません。

「あなたは僕がこれまでに会った誰よりも、タンゴとフェラーリの運転が上手だ!」

フランクはダンスホールで見初めた美女に、タンゴを踊ってみせたのです。そして街中では市場者のフェラーリを見事に操ってみせます。その腕前、堂々とした振る舞いは盲人のそれではありません。

それでも彼には信頼できる友人や家族は誰もいないのです。
久しぶりに訪れた実家ですら厄介者扱い。彼も彼で憎まれ口ばかりたたいてしまい喧嘩寸前。

自分があった誰よりも人生を知っているのに、孤独から抜け出すことができない。
チャーリーはそんなフランクをほうっておけなくなります。
一方のフランクも、チャーリーが抱えている悩みを知り、なんとか助けになろうとします。

ひょっとしたら、チャーリーが自棄を止めてくれるかもしれないと期待していたのでしょうか。
ただ、ニューヨークへの旅の同伴者がチャーリーのような純真な青年でなければ、こうした展開になってはいなかったのかもしれません。

まったく境遇の違う二人に芽生えた友情。
それだけでも十分に感動的ですが、本物の感動はラストにやってきます。

フランクとの旅から戻ったチャーリーに待っていたのは公開の懲罰委員会。
校長は全校生徒の前で、チャーリーに密告を促そうとします。

チャーリーは仲間を売りたくありません。しかし、さもなくば退学です。
そこに現れたのは誰あろうフランク。校長は退出を迫りますが、フランクはチャーリーの親代わりだと言い張るのです。

フランクは校長と生徒の目の前で演説をぶちます。

「私も何度か岐路に立った。どっちの道が正しい道かは判断できた。いつも判断できた。だが、その道を行かなかった。困難な道だからだ。チャーリーも岐路に直面した。そして彼は正しい道を選んだ。真の人間を形成する信念の道だ。彼の旅を続けさせてやろう。彼の未来は君ら委員の手中にある。価値ある未来だ。保証する。潰さず守ってやってくれ」

愛情を持って 校長は数々のエリートを輩出してきたこの学校の伝統を説いて聞かせますが、フランクはこう反論します。仲間を売るよう奨めるような学校に、責任感のあるリーダーが育てられるのか、と。

フランクの名演説に、生徒たちは総立ちになって拍手を浴びせます。

ちなみに映画の原作となっているのはイタリアのジョヴァンニ・アルピーノの小説。「闇と蜂蜜」という意味で、同国で映画化されています。

セント・オブ・ウーマンはそのリメーク。
ただ作中の設定すべてが巧妙にアメリカナイズされているので、そう指摘されないと容易には分かりません。

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