2014年9月29日月曜日

第二十二幕 LIFE!

「LIFE!」は2013年公開のアメリカ映画。ベン・スティラー監督、主演のコメディ。タイトルとなっているLIFEとは、2007年に休刊になった米雑誌「Life」に由来します。

Lifeは1936年に写真週刊誌として産声を上げました。当時はインターネットはもちろんのこと、テレビのような動画メディアもどれほど普及していません。写真の持つ影響力は、現代とは比べようもありません。Lifeに寄稿したのは、ロバート・キャパ、土門拳ら時代を代表する写真家ばかりだったのです。

その後は時代と経営状況によって、休刊と復刊を繰り返すようになります。この映画でも取り上げられている先ほどの休刊は、インターネットの普及で紙の印刷メディアが読まれなくなったこととも影響しています。そうしてLifeはウェブ媒体に移行することになるのですが、この映画の主題となっているのは、まさに印刷版最終号の表紙写真をめぐるドラマです。



この映画の原題はThe secret life of Walter Mitty。

主人公のウォルターは、Lifeの写真のネガを管理しています。華やかな雑誌社にあっては、縁の下の力持ち。表に出ることもなく、一言でいえば、うだつの上がらない男です。

彼は美人同僚シェリル(クリステン・ウィグ)に思いを寄せるものの、会員制のマッチングサイト(日本風にいえば婚活サイト?)上でアプローチを試みるばかり。彼女からの反応は一切ありません。

さて、休刊の決まったLifeに新経営者テッド(アダム・スコット)たちがやってきました。
彼は経営合理化策を打ち出す一方、ウォルターに、最終号を飾る表紙写真の提出を求めます。テッドは社員の首切りにも着手していました。仕事に不手際があれば、会社に居場所がなくなるのは避けられません。ところがカメラマンのショーン(ショーン・ペン)が撮影したはずのネガがどこにもないのです。その前後のカットはあるのに、肝心の表紙用だけが抜け落ちていました。

その場では言い逃れでごまかしたものの、ウォルターはネガの提出を厳命されます。
こうしておとなしいウォルターはネガを探す旅に出ることになります。

なぜかって。「To see the world」がLifeのモットーだからです。
冗談ではなく、このLifeのモットーは映画のいたるところにちりばめられています。たとえば、映画の滑走路に、飛行機の座席の背もたれにさりげなく。


ショーンも「世界に目を向けよ」を地でいくカメラマンでした。
彼は常に世界中を撮影してまわっており、連絡先はおろか、所在すら誰にも分からないのです。

その手がかりはネガに残されていました。
ウォルターはニューヨークからグリーンランド、アイスランド、そしてアフガニスタンへと飛びます。ところが、いつでも後一歩のところで、ショーンとの接触を逃してしまうのです。

むなしく故郷に戻ってきたウォルター。
ところが母は思いがけないことを告げます。ショーンが家にやってきていたのです。
そうして再び旅立ったといいます。行き先はヒマラヤ。
長い長い旅の末、ウォルターはヒマラヤでついにショーンをつかまえます。
ところが驚いたことに、彼はネガを持っていませんでした。
それどころか、既にウォルターに渡したというのです。しかも、彼を驚かせるために、気づかれぬうちにウォルターの財布に忍ばせていました。ネガが入っているとはつゆ知らず、ウォルターは財布をゴミ箱に投げ捨ててしまっていました。

こうしてネガを提出できなかったウォルターは首を告げられます。
自分の首よりも、ウォルターは、ネガを紛失してしまったことが悔やまれてなりません。
長年、勤め続けてきた雑誌の最終号を飾ることができなかったからです。

ところがどっこい。ネガは思いがけない形ででてきます。
そして、そのネガに映されていたのは…。


ところで、近年、姿を消したメディアはLifeだけでありません。一時代を築いた多くの新聞や雑誌が続々と休刊、廃刊に追い込まれています。

それらのメディアを形作ってきたのは、記者やカメラマンの特ダネばかりではありません。
ウォルターのように、どちらかというと日の当たらない人たちの努力によって、版を重ねてきたのです。
映画「LIFE!」が人気を博したのも、日陰者だったウォルターが主役に躍り出るからでしょう。

またライフ誌のモットーである

“To see the world, things dangerous to come to, to see behind walls, draw closer, to find each other, and to feel. That is the purpose of life.”
を地で行く作品になっているのも、映画の作り手に雑誌への愛着があったからかもしれません。

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