2014年10月14日火曜日

第二十五幕 ラッシュ/プライドと友情


「ラッシュ/プライドと友情」は2013年のアメリカ映画。ロン・ハワード監督。

 

主人公のニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)、ジェームス・ハント(クリス・ヘムズワース)はF1年間チャンピオンの座をかけて激しく争ったライバル同士。理詰めのラウダと感性のハント。対照的な二人のデッドヒートにファンやマスコミは大いにわきました。

 

ファンやマスコミにとって、レースは娯楽や関心の対象でしかありません。

一方、レーサーは死と隣り合わせで、時速350キロのマシンに生身の体をゆだねています。少しでも操作をあやまったり、車にトラブルが起きたりすれば、命を落としかねません。

 

危険との向き合い方、人生観において、ラウダとハントは対極にあります。

ラウダがリスクを最小化しようとするのにたいして、ハントはリスクを楽しもうとします。その生き方の違いのゆえに、二人は相容れることがありません。


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大雨に見舞われたドイツ・ニュルンベルクでのレース。

大会を強行すればスリップが続出することは免れません。ここでラウダは意外な行動に出ます。レース中止の提案でした。年間王者争いでトップを走っていたラウダ。結婚したばかりの彼には守るべき家族がありました。それに猛反対したのがハントでした。彼にも妻がいましたが、ひとりの女性を愛しぬくという恋愛観はもちあわせていません。

 

そしてなにより、ラウダを追いかけるハントにしてみれば、中止など受け入れようもありません。彼は居並ぶレーサーたちの面前でラウダを卑怯者となじります。

 

採決の結果、レースは強行。ラウダの悪い予感は的中します。

スリップのためコースアウトした彼はマシンもろとも炎に包まれます。瀕死の大やけどを負いながら一命を取りとめたものの、レースへの復帰は誰もがないものと思われました。愛する妻、そしてライバルのハントでさえも。

 

ところがラウダはサーキットに戻ってきます。
やけどによってその容貌は変わり果てていました。

太ももの皮膚を顔に移植し、肺にたまった膿を吸引するという過酷な治療でした。そして彼が病院にいた間、ポイント争いでトップに躍り出たのはハントでした。ほかのレーサーならともかく、彼の後塵を拝することなど我慢ならなかったのかもしれません。もしくはレーサーとしての本能だったのでしょうか。いずれにしろ、常人の理解を超えた行動であることに間違いありません。

 

復帰後の富士ドライブウェー。サーキットは再び雨に濡れます。

死のふちから舞い戻ってきたとはいえ、ラウダはラウダでした。今度はハントを追いかける立場に置かれていたものの、レースを棄権します。
一方のハントはレースを強行。悪条件のなか、攻めの走りを貫きます。
同じく雨のドイツで炎に包まれたライバルの残像、死の恐怖を振り切るような疾走は、臨場感にあふれているといえるでしょう。ハントはついに念願の年間チャンピオンの座を勝ち取ります。

 

戦い終えた、その後の二人の歩みも対照的でした。

息長く走り続けたラウダをよそに、ハントはレースからテレビ界に転進。チャンピオンとしてもてはやされた彼は、酒と女、遊びに浸って命を縮めます。四十代の若さで世を去りました。

一方のラウダはハントに敗れて王座を逃しはしたものの、人生では勝者となりました。

もはやそんな勝ち負けはどうでもよかったのかもしれません。レースが、マシンがあったからこそ二人は競い合ったのでしょう。そしてライバルがいたからこそ、命がけで戦った。

 

周囲にしてみれば、二人の激しい争いは常軌を逸しているとしかみえません。
瀕死の重傷を負いながらもレースに駆り立てられるラウダを見守るしかない、妻のマレーネ(アレクサンドラ・マリア・ララ)は、そんな第三者の視点を代表するようでもあります。

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