2014年10月31日金曜日

第二十八幕 42~世界を変えた男~

「42~世界を変えた男~」は2013年公開のアメリカ映画。ブライアン・ヘルゲランド監督、チャドウィック・ボーズマン主演。

アフリカ系アメリカ人として初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)の奮闘と苦悩を描く(ここでいう「初」とは20世紀以降のメジャーリーグを指す)。タイトルの「42」は、ブルックリンドジャースで着けていたロビンソンの背番号。彼の功績をたたえて、この背番号はメジャーリーグ全球団で永久欠番となっています。

ロビンソンがメジャーリーガーとしての歩み始めたのは第二次大戦後のことでした。
彼の祖父はアフリカから連れてこられたそうです。ロビンソンの父親は蒸発。苦学の末大学を卒業し、第二次大戦のため軍務につきます。


大戦中は彼と同じように、多くのアフリカ系アメリカ人が国のために銃を取りました。
ところが戦争後に待っていたのは、白人による厳しい差別。公共の場で白人との同席は許されません。当時のメジャーリーグは白人のみ。黒人がプレーするなどもってのほかだったのです。
世間の荒波に耐えて、メジャーリーガーとなったロビンソンはもちろん、道を開いたドジャースと球団社長ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)も立派でした。

ロビンソンが戦ったのは対戦相手だけではありませんでした。
まず白人のチームメートが彼の存在を受け入れようとしません。社長命令でナインは不承不承、ロビンソンとのプレーを受け入れますが、今度は対戦相手と観客が黙っていません。敵軍のベンチからは意地汚いやじ。スタンドからはブーイングの嵐。

次々と襲い掛かる屈辱に耐えてまでプレーしなければならないのか。
ロビンソンは荒れ狂うか、さもなくば逃げ出そうとします。苦悩する若者を励まそうとするリッキーの姿が印象的。「我慢する勇気を持て」「歴史を変えろ」と。

リッキーがロビンソンを受け入れた背景には、もちろん商業的な動機もあったようです。
アフリカ系アメリカ人からの収入が見込めるという。たとえそうだったとしても、利益よりも障害がまさっていました。差別はグランドだけにとどまらず、場外ではドジャース球団の宿泊拒否が起きていたのですから。


そうした差別に立ち向かうロビンソンに手を差し伸べようとするチームメートの姿も感動的。
下手をすればポジションを失ってしまいかねないというのに、見えすいたデッドボールやラフプレーを受ければ自分のことのように相手に食ってかかります。

もちろん、それだけでは差別的な言動がグラウンドからなくなることはありませんでした。
いやそれだからこそ、人種差別の過ちと、野球というチームスポーツのよさを再発見できるのです。

この「42」はハリソン・フォード以外は若手俳優ばかり。
それでもチャドウィック・ボーズマンの演技はけれんみがないだけでなく、きっと運動神経もよいのでしょう。古き時代の物語とはいえ、映画に登場する野球選手が下手そうに見えない。プレーするチャドウィックがスクリーンから飛び出してきそう。そうして生み出されるリアリティも、この映画に厚みを与えています。

この映画は野球だけでなく、アメリカの現代史にも大きく影を及ぼすテーマ。
アメリカ人にとっては歴史の暗部ともいえます。それをあえて映画化した心意気に、われわれ日本人も学ぶべきではないでしょうか。

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